「世界一美しい散歩道」と称賛され続けているMilford Track。

3・4日目の天気予報が雨だったため、本来は3日目に訪れるはずの「Mackinnon Pass(マッキノンパス)」を、2日目に一足先に訪れ、感動で魂が震えるほどの絶景と出会うことができた。

※前半戦の様子はこちら

 

「もうこれ以上の感動は望めまい…」

 

後半戦は雨を覚悟して望んだ。しかし、Milford Trackの奇跡はこれだけでは終わらなかった。

 

 

 

●ミルフォード・トラック3日目

3日目の朝。雨は降っていなかったものの、山小屋周辺は深い霧に包まれていた。

他の登山客には申し訳ないが「昨日のうちに登っておいてよかった」と胸をなで下ろしながら、僕はゆっくりとMackinnon Passへと向かった。

そして約2時間ほどかけて到着。

 

状況は変わらず、周辺はまっ白。

 

昨日見せてくれた奇跡の絶景は深い霧に包まれ、何も見えず、登山客はだいぶ落ち込み気味。

 

それもそう。1年以上前に予約をして、この日を楽しみに、わざわざ遠い国からニュージーランドへとやってきた人もたくさんいるわけだから。

 

登山客は晴れることを信じて、ここで時間をつぶしていると、ある来客が。

 

 

この鳥は「Kea(ケア)」と呼ばれ、オウムの一種。ニュージーランド・南島の山岳地帯のみ生息するとても珍しい鳥で、全長約50センチと大きく、オリーブグリーンの羽と、広げた翼の下に見える鮮やかなオレンジが美しい。

 

しかし「世界で最も頭のいい鳥」とも言われ、”超”がつくほどのイタズラ好き。

 

バックパックや靴などの荷物を放置しておくと、紐が引きちぎられていたり、小さいモノは持って行ってしまったりと、油断していると大変な目に合う。

 

この来客と遊んでいること30分。

 

一瞬、上空に青空が覗いた。
登山客にも少しばかり活気が出てくる。

 

 

そして待つことさらに5分。

 

Mackinnon Passの周辺は一瞬にして雲がはけ、周りを見渡すと雲海が目の前に広がっていた。

 

 

登山客のボルテージも最高潮に。

 

朝の柔らかい光に包み込まれた「Mackinnon Pass」は昨日とはまた異なる、より神々しい雰囲気を醸し出していた。

 

 

この国立公園の周辺一帯は、年間300日以上も雨が降る”超”多雨エリア。そんな中で2日連続、しかもこのMackinnon Passで晴れてくれるという…

 

 

上の写真に写っているご夫婦は、このMilford Trackを登るためにイギリスからわざわざ足を運び、なんと1年以上も前に予約していたとのこと。

 

 

ちなみに、Mackinnon Passにあるこの記念碑(上の写真)。ここMackinnon Passは、1888年、クインティン・マッキノンとアーネスト・ミチェルにより開拓され、彼らのトラック開拓の労を讃えるために作られたとのこと。

 

360度、奇跡の絶景が広がっているMackinnon Pass。彼らの功績に最大限の経緯を払いながら、僕はこの地を後にした。

 

そして3日目のもう1つの見どころに、ニュージーランド最大の滝「Sutherland Falls(サザーランド滝)」がある。

 

 

落差はなんと580mもあり、世界でも5番の高さを誇る大瀑布とのこと。

 

この滝の真下まで行くと、そこから見るサザーランド滝の高さと、吹き飛ばされそうになるほどの水しぶきに圧倒される。

 


※びしょ濡れになるのでご注意ください

 

見どころたっぷりの3日目。結局、雨の予報を覆し、ずっと快晴。またもや素晴らしい1日となり、明日いよいよ最終日を迎えます。

 

●なぜミルフォードトラックは「特別」なのか?

Milford Track最終日の前に少しだけ余談。

Milford Trackが「特別」と言われるのは、もちろんその奇跡とも言える美しさが1番の理由ではあるが、その他にも特別と感じさせてくれる要素がいくつかある。

 

その1つが「一方通行」であること。

 

ニュージーランドには人気のロングトレイルがいくつもあり、その1つに「Routeburn Track(ルートバーン・トラック)」というコースがある。

全長33kmの中にいくつか山小屋があり、多くの人は2泊3日で歩くが、ゆっくり景色を楽しみたい人は3泊4日、体力に自信のある人は1泊2日、と自分で山小屋や宿泊数をアレンジすることができる。

しかも右回り・左回り、どちらからでもスタートでき、またあるところまで行って引き返す、といったプランニングも可能。

 

しかしMilford Trackに関してはは、そのようなことができず、予約をした時点で、3泊4日、決められた日に、決められた山小屋に宿泊する必要があり、もちろん逆方向ルートを歩くことも許されていない。

 

また入山規制がとても厳しく、Milford Trackに足を踏み入れることができるのは、1日わずか40人。

 

日本のようにピークシーズンは登山客が溢れて、登山道に行列ができたり、山小屋が人で溢れていたり…ということがないため、この大自然を存分に楽しむことができるのも、ニュージーランドのロングトレイルの醍醐味の1つ。

ツアー参加やガイド付きウォークの方もいるので正確な数はもう少し多いが、どちらにせよ、予約なしに入山することはできない。

 

経済よりも、自然を守ることを何よりも優先しているニュージーランド。

 

わずか40人だけが「世界一美しい散歩道」を存分に味わうことができるからこそ、このMilford Trackは「特別」であり、世界中のトレッカーを魅了し続けている。

 

 

●ミルフォード・トラック最終日

いよいよ最終日。あまりに感動的な3日間だったため、最終日を迎えた朝は寂しさがどことなく込み上げてきた。

 

天候は曇り。

すでに標高はほぼ海抜に近いところまで降りてきたため、最終日は、初日と同じように原生林に囲まれた谷沿いを歩きながら、ゴールを目指す。

 

見所はそれほど多くないものの、所々に美しい滝がお出迎え。

 

 

まるで映画の中に入り込んでしまったかのような、神秘的な空気感。

 

水はどこまでも美しく透き通っていた。

 

人が手を加えなければ、自然というのはここまで美しいものなんだと、感動と切なさが込み上げてくる。

 

 

●インパクト”大”のゴール地点

そして、いよいよゴール地点が近付く。3泊4日53.5kmと聞くと、とても長い距離に感じるかもしれないが、歩いていると本当にあっという間。

 

「まだまだ終わらないで欲しい…」

 

むしろゴールに近付けば近付くほど、そんな気持ちが強くなっていく。

 

そして、ついにゴール地点「Sandfly Point(サンドフライ・ポイント)」に到着。歩き終えた全員が、とても充実した表情を浮かべていた。

 

 

ただし。

 

ただしただし。

 

「ハッピーエンド」だけで終わらしてくれないのが、このMilford Track。

 

最後に強烈な、とんでもなく強烈なものを用意してくれていた。

 

「サンドフライ・ポイント」

 

サンドフライ…この名前にゾッとする人もいるのではないだろうか?

 

そう、ニュージーランドで最も有害な生き物と言われる超厄介な「虫」。

見た目は小さなハエで、噛まれると、2週間近くも痒みと腫れが続く。ここではないものの、僕はサンドフライに顔を2カ所刺され、その時は頬がおたふくのように腫れあがってしまったことがある。

特に女性の方、ニュージーランドで登山するときはくれぐれもご注意を。

 

そんな恐ろしいゴール地点「サンドフライ・ポイント」にはシェルターがあり、そこで待機。

リラックスしたいところだが、サンドフライから身を守るため、登山靴も脱がず、顔にタオルを巻くなど、万全の状態で、お迎えのボートを待つ。ボートに乗り、ようやくサンドフライの呪縛から解放された。

 

最後の最後までエピソード満載なMilford Track。美しさだけでなく、インパクトも群を抜いているロングトレイルだった。

 

●ミルフォード・トラックを終え、ミルフォード・サウンドへ

ミルフォードトラックとしてはここで終了だが、実は最後にもう1つ大きな見どころがある。

それは、あの観光地として有名な「Milford Sound(ミルフォードサウンド)」。QueenstownやTe Anauからのツアーもたくさんあり、訪れたことのある方も多いのではないだろうか?

氷河によって垂直に削り取られた山々が、1,000m以上に渡って海面からそそり立つドラマチックな眺めは、この国を代表する風景の1つ。

 

厚い雲に覆われていたものの、このような荒々しい雰囲気のMilford Soundもなかなか味があってカッコいい。

ここからバスですぐに帰ることができるものの、僕はここで1泊。夕方から雲がはけてくれたお陰で、感動的な星空と、次の日には快晴のMilford Soundがお出迎え。

 

僕はこの5日間で、一生分の絶景を目の当たりにしたんじゃないか…。そんな感覚に陥るほど、奇跡的な5日間だった。

 

●ミルフォード・トラックを終えて

3泊4日、全53.5kmを終えて、心地の良い疲れと、今まで感じたことのない達成感に包まれていた。間違いなく、一生心に残り続けるであろう、奇跡の絶景と思い出たち。

 

実は、この「Milford Track」がきっかけで、僕は帰国後、ニュージーランド写真展を開催することを決めた。

 

この感動を100%伝えることはできないけれど、少しでもたくさん人にこの感動を共有したかった。伝えたかった。

そしてできれば、この大自然を直接、肌で感じて欲しい。

 

大自然の、人の心を癒す力。
自分自身と深く繋がることのできる不思議な空間。

 

自然が持つパワーはどこまでも偉大で、計り知れない。

 

その体験は間違いなく、人生のハイライトの1つとなり、自分が自分になるため、自分が自分に還るための手助けをしてくれるはずだ。

 

素晴らしい奇跡を見せてくれたこの「Milford Track」に感謝の想いを込めて。

 

心からありがとう。

富松卓哉 | Takuya Tomimatsu


ニュージーランド写真家

【Small is Beautiful 〜小さく美しく生きる〜】をライフテーマとし、必要以上のモノを持たない暮らし、そして”好き”を軸に生きるライフスタイルを追求し続ける写真家。

ニュージーランドで学んだ『Small is Beautiful』という生き方を日本に届け、少しでもポジティブな未来へ繋げることを目標に、写真展や講演会・執筆活動などを行っている。2016年からは日本全国でニュージーランド写真展を開催。現在まで16カ所で開催し、1000名以上を動員する。

現在も毎年2~3ヶ月間をニュージーランドで過ごし、ガイドブックやフォトエッセイの出版に向けて、各地を訪れ、撮影や取材を行っている。また『ニュージーランド・リトリートツアー』をプロデュースするなど、”好き”を軸に活動の幅を広げている。

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