「人生最大の挑戦」としてぼくが2020年1月から挑んだ、総距離3,000kmのニュージーランドが誇る最長ロングトレイル『Te ARAROA(テ・アラロア)』。残念ながら新型コロナウイルスの影響で、ニュージーランドは3月下旬にロックダウンとなり、1,100km地点で泣く泣く中断することとなった。しかしその旅の中では数々のドラマがあり、この経験は生涯忘れらないものになったことは間違いない。

ぼくは「ニュージーランド写真家」として、写真展やトークライブの開催、ガイドブックの出版など、 人生を変えてくれたニュージーランドの〝知られざる魅力〟を届けるべく、2015年から自分なりに表現活動を続けてきた。そして今回、ニュージーランドを最北端から最南端まで徒歩で縦断することで、この国をもっと深く知ることができるんじゃないか…。そう思って、この過酷なロングトレイル『テ・アラロア』に挑戦することを決めたわけだが、その予想は1mmも間違っていなかった。

そこで、この1,100kmの途中で目の当たりにした数々の美しい景色や、この旅で出会った仲間とのエピソードを「コラム」という形で届けていくことに。またこれから『テアラロア』やニュージーランドのトレッキングやロングトレイルに挑戦したいという人の為に、出発までにどんな準備をしてきたのか、どんな道具・装備が必要なのかなども含め、実体験を元に、さまざまな視点から『テ・アラロアの真の魅力』を紐解いていこうと思う。

▶『テアラロア3,000km縦断への挑戦』プロジェクト概要はこちら ◀

記念すべき第1回目は、入門編として、ニュージーランドの最北端から最南端まで 3,000kmを徒歩で縦断するという、途方に暮れるような距離を歩かないといけない『テ・アラロア』とは一体どんなコースなのか? について。今回は『テ・アラロア』の特徴や歴史なども含め、基礎的なところをまとめてみた。

そもそも「ロングトレイル」とは?

まず『テ・アラロア』を説明する前に「ロングトレイル」という言葉自体を聞いたことがないという人も多いかもしれない。「トレイル」とは、登山道や自然歩道など「自然に親しみながら歩く」ことのできる道のことで「ロングトレイル」とはその言葉の通り、距離の長いトレイルのこと。

日本ではまだロングトレイルはそれほど浸透していないが、世界的にはロングトレイルの人気はどんどん高まっており、アメリカにある総延長4,260kmもあるパシフィック・クレスト・トレイル(PCT)アパラチアン・トレイルジョン・ミューア・トレイルなどがロングトレイルの代表格。

『テ・アラロア』は、そんなロングトレイルの人気の高まりを受けて、2011年12月に完成したばかりの比較的若いロングトレイルコース。初年度のテアラロア踏破者はわずか30人ほどだったそうだが、2015年には年間350人が踏破。2017年には550人、2019年には1200人ものハイカーが踏破するなど、年々挑戦者の数が増えている。テアラロアも〝新たなロングトレイルの聖地〟として、世界的にも認められつつあるようだ。

ちなみに「何百キロ、何千キロも歩くなんて頭がおかしい!」と思う人も多いだろうが、実際に1,100km歩いて感じたことは、やはり「ロングトレイルを歩くやつは頭がおかしい」ということ。イカれている奴しか、何百キロ、何千キロも歩かない。でもそんな〝Good Crazy〟な人たちの経験談がまた面白く、もっともっと色んなことに挑戦しようという気にさせてくれる。人生の深みがある人は、他の人がやらないようなことをたくさん経験しているなと改めて実感した旅だった。「ロングトレイル」は自分の殻を破るという意味では、最高のアドベンチャーなのかもしれない。

ニュージーランド最長のロングトレイル『テ・アラロア』とは?

手付かずの大自然が数多く残り、Great Walks(グレート・ウォーク)を始め、「世界で最も美しい散歩道」と称されるミルフォード・トラックなど、世界中のハイカーを魅了し続けているニュージーランド。そんなニュージーランドに数多くあるトレッキングコースの中で「究極のロングトレイル」と言われているのがこの『テ・アラロア』だ。

テ・アラロアとは、ニュージーランド最北端 Cape Reinga(ケープ・レインガ)と、最南端の町 Bluff(ブラフ)を結ぶ総距離3,000kmのトレッキングコースのこと。毎日20kmのペースで歩いても150日かかる道のりで、通常4~6カ月間をかけて踏破する、ニュージーランドが世界に誇る世界屈指のロングトレイルだ。ちなみに日本最北端の宗谷岬から最南端 沖ノ鳥島までの直線距離が2,845km。そう考えるととんでもない長い道のりであることは間違いない。。。

またこの『Te ARAROA』とは、ニュージーランド先住民マオリ族の言葉で「The Long Pathway(長い道のり)」という意味(長い道のりってそのままじゃん、とか言わないように)で、現地の人たちは、テアラロアのことを略して「TA(ティーエー)」、これを歩くハイカーのことを「TAハイカー」と呼んでいる。

ニュージーランド現地でも「テ・アラロア」の存在は浸透しており、コース上を歩いているとしばしば「Are you TA Hiker?」と声をかけてもらった。ちなみに、テアラロアのコース上にある有料キャンプ場やゲストハウスでは「I’m TA Hiker!!!」と伝えると割引してくれるところもあるので、テ・アラロア挑戦者はぜひ一言伝えてみよう。

ニュージーランドの最北端ケイプレインガ

● ニュージーランドの基礎情報 ●

同じ島国で、同じ先進国。日本と同じように四季があり、気候も似ているなど「姉妹国」と称される日本とニュージーランド。国土面積も日本の約3/4とそれほど大きさも変わらないのだが、日本の人口が1億2,000万人に対して、ニュージーランドはわずか480万人たらず。初めてニュージーランドを訪れる人はその人の少なさ(特に南島)に驚くことだろう。

ニュージーランドは南半球に位置するので、北に向かうほど暖かくなり、南に向かうほど寒くなる。季節も逆なので、ニュージーランドは12~2月が夏、6~8月が冬となる。

またニュージーランドの国土は、上の写真と同じように北島と南島に大きく分かれており、北島に人口の8割が集中し、南島にはわずか2割(つまり100万人にも満たない)。「まるで別の国?」と思うほど、北島と南島の雰囲気が異なるため、個人的にはニュージーランドのライフスタイルを味わいたいなら北島、大自然を満喫したい人には南島の旅がおすすめだ。

▶ トミマツタクヤ厳選!120%大満足のニュージーランド旅行のおすすめ記事はこちら ◀

他とは一味違う「テ・アラロア」の最大の特徴とは?

そんなニュージーランドにおいて「究極のロングトレイル」と言われる『テ・アラロア』だが、最大の特徴は自然の中だけでなく、市街地・牧場・ビーチなどもルートに含まれていること。オークランドやウェリントンといった大都市もコースの一部なので、街中でも注意深く探してみると、ところどころに「Te ARAROA」と書かれた看板を見つけることができる。

もちろん街歩きは退屈だが、久しぶりに味わうホットシャワーの感動は半端じゃない。もちろんベッドで睡眠を取ることができるし、現地のカフェやファーマーズ・マーケットに寄ったりと、ニュージーランドの大自然だけでなく、現地の人々のライフスタイルやカルチャーとも触れ合いながら、つまりはテアラロアは「ニュージーランドのすべて」を満喫できる究極の3,000kmの旅になるということ。

特に「現地の人との出会い」は何物にも代えがたい経験だった。1,100kmの間でいったいどれだけたくさんの人に声をかけてもらい、助けてもらったか…(このエピソードについてはまた別の機会に詳しく書かせてもらおうと思う)。街にいる間に身体をしっかり休めて、美味しいものを食べて、必要な食材や買い出しをして、また大自然の中を歩いていく。ぼくは1,100kmの旅をそんなサイクルで身体と心をケアしながら、少しずつ歩みを進めていった。

ニュージーランドの首都ウェリントンもコースの一部

『テ・アラロア』の豆知識

テ・アラロアの最短記録
2012年から2013年のシーズンにイギリスのウルトラマラソン選手であるジェズ・ブラッグが達成した【53日】。ちなみにぼくが90マイルビーチを歩いている時にもギネス記録に挑戦している人と出会った(写真下)が、彼は記録更新できなかったみたい。

テ・アラロアの最年少記録
完全踏破の最年少記録は、両親と共に7歳(!?)で踏破したジョナサン・ラプシーが保持している。

テ・アラロアの歴史
テアラロアは2011年12月に完成したばかりの比較的若いロングトレイルコースと、 冒頭では書いたが、この構想が始まったのはなんと50年以上前、1960年代までさかのぼるらしい(らしい、としたのはあまりに情報が少なく、謎の空白期間もたくさんあったから)。1960年代にニュージーランド山岳団体連合(Federated Mountain Clubs of NZ)が「ナショナル・ウォークウェイ」を提唱したと言われている。そして謎の15年の空白期間を経て、1975年にニュージーランド遊歩道委員会(NZ Walkways Commission)が設立され、”NZ – long Scenic trail”として構想を開始。そしてさらに謎の19年の時を経て、1994年にジャーナリストであったジェフ・チャペルがニュージーランドの長距離歩道の敷設を提案し『Te ARAROA TRAST(テ・アラロア・トラスト)』を設立。敷設のための提案や交渉の結果、この計画は2006年ごろから地方政府の敷設計画に組み込まれ始めた。その後10年間、数百名のボランティアによる作業が行われ、2011年12月3日に正式に開通した。

ちなみに…ラッキーなことに、テアラロア出発直前、創始者ジェフ・チャペルさん(右のおっちゃん)と直接お会いすることができた。1時間ほどみっちりインタビューさせてもらったので、その内容についてはまた後日詳しく書きたいと思います。

挑戦者必見!『テ・アラロア』おすすめリンク&書籍

今後も、テアラロアやニュージーランドのロングトレイルについては詳しく書いていくが、最後に、テアラロアに挑戦したいという方におすすめのホームページと書籍をご紹介して終わろうと思う。

Te ARAROA – New Zealand’s Trail

テアラロアの創始者ジェフ・チャペル氏が設立した 『Te ARAROA TRAST(テ・アラロア・トラスト)』のホームページ。すべて英語ではあるが、テアラロアを歩くために必要な情報はこのサイトを見ればすべて書いてある。テアラロアに挑戦したいという方は端から端まで目を通しておこう。

A Walking Guide to New Zealand’s Long Trail Te Araroa

こちらもテアラロアの創始者ジェフ・チャペル氏が書き上げた書籍。ケープレインガからブラフまでを115のトレイルに区切って解説しており、その他にもテアラロアの歴史から歩き方、様々なコツが書かれていて、イメージトレーニングとして大いに活用した1冊。ただ、テアラロアは毎年ルートが少しずつ変わっているので、最新情報は先ほど紹介した『Te ARAROA TRAST』を確認する方がベター(ちなみにこちらはアマゾンで購入可能↓↓↓)

さて、今回は『テアラロア』の入門編として、コースの特徴や歴史に関して書かせてもらったがいかがだっただろうか?

まあ普通の人なら歩こうとは思わないはずだが、ぼくがもしお伝えできることがあるとしたら、もし挑戦したいと思うなら、迷うことなくチャレンジした方がいいということ。最初はうまく行かないことばかりだし、肉体的にも精神的にも辛いことの方が多い。でもこの旅で出会った人たちとの思い出は生涯忘れらないものになったし、今までとは比べ物にならないほど、この国の魅力と出会えたと思う。

次回以降もテアラロアでの旅の記録、現地の人たちとのエピソードなど、複数回に渡って、さまざまな視点からテアラロア/ロングトレイル/ニュージーランドの魅力をぼくなりにお届けしていきます。お楽しみに!

2020.09.05. トミマツタクヤ

トミマツ タクヤ


ニュージーランド写真家

1986年11月13日 福岡生まれ。大学卒業後、一般企業に就職するものの 会社生活に馴染めず転職を繰り返す。度重なる体調不良をきっかけに会社員生活に終止符を打ち、2013年 世界一周を夢見てニュージーランドへ初渡航。数ヶ月の滞在予定が1年4ヶ月もの歳月を過ごす。帰国後は【Small is Beautiful より小さく、よりスローに。】をテーマに撮影・表現活動を行う。2015年から過去50回に渡り「写真×音楽×ストーリー」を組み合わせた上映会スタイルの写真展『Small is Beautiful』を日本全国で開催。”写真展示のない写真展” として話題を呼び、延べ5000名以上を動員。自身の人生をも変えたそのメッセージと世界観は多くの人の感動を呼ぶ。2018年9月にはガイドブック『LOVELY GREEN NEW ZEALAND』を四角大輔氏らと共に出版。2020年1月からはニュージーランドを最北端から最南端まで約3,000kmを縦断する『テ・アラロア』に挑戦(※ 1,100km時点でロックダウンにより中断。2022年より再開予定)。

現在はオア明奈氏と共にNZライフスタイルブランド『iti(イティ)』を創業し、オンラインショップと会員制コミュニティを運営するなど、『Small is Beautiful』の世界観を追求すべく、新たなステージへと突入した。

WebsiteInstagram

※ 詳しいプロフィールはこちら