ニュージーランドには数々の美しい大自然が残っており、世界中のハイカーたちを魅了し続けている。日本にいた頃はさほど登山やロングトレイルには興味のなかったぼくも、ニュージーランドを訪れてから、がっつりその世界に魅了されてしまった1人。そして数多くあるニュージーランドの美しいトレッキングコースの中から、特にお勧めしたいのが Great Walks(グレート・ウォークス)と呼ばれるロングトレイルコースだ。
『グレート・ウォークス』とは DOC(Department of Conservation)と呼ばれるニュージーランド政府の自然保護省が「最も景観が素晴らしい」と定めているコースのことで、現在9つのグレート・ウォークスが指定されている。今日はその中から、ぼく自信がすでに訪れたことのある7つのコースをご紹介しようと思う。
※ 2019年から「Paparoa Track and Pike29 Memorial Track」が追加され、計10コースになる
Tongariro Northern Circuit|トンガリロ・ノーザーン・サーキット
Tongariro National Park / トンガリロ国立公園(北島)
総距離43km(2泊3日)
映画「ロード・オブ・ザ・リング」のラストシーン「モルドール」のロケ地となったトンガリロ国立公園。活火山ということもあり、他の国立公園とはまったく雰囲気が異なり、物々しい独特の空気感が漂うロングトレイルコース。足場も柔らかく、体力的にはややキツいところもあるが、溶岩やクレーター、もくもくと湧き上がる蒸気、エメラルド色に染まる湖など、活火山ならではの織りなす壮大な景色は圧巻の連続だった。
Lake Waikaremoana|レイク・ワイカレモアナ
Te Urewara National Park / テ・ウレウェラ国立公園(北島)
総距離46km(2泊3日)
ワイカレモアナ湖の周りをぐるっと一周するロングトレイルコース。スタート地点から「Penekire Hut」までは一気に登るため体力的にはなかなかキツいが、そこから見下ろす湖の青の深さ、そして奥に見える山々の景色は圧巻だ。
Abel Tasman Coast Track|エイベルタズマン・コースト・トラック
Abel Tasman National Park / エイベル・タズマン国立公園(南島)
総距離60km(2泊3日 – 3泊4日)
ニュージーランド内で最も多くの観光客が訪れると言われているエイベル・タズマン国立公園。海岸線に沿って美しいタスマン海を眺めながら歩くロングトレイルコース。このコース自体は海岸線をすべて歩くものになっているが、個人的には途中をクルーズやカヤックで行く方がお勧め。また潮の満ち引きにより、干潮時のみ歩けるコースが出現することもあるので、干潮時の時間をしっかり調べてから行くと、より楽しみの幅が広がるだろう。
Heaphy Track|ヒーフィートラック
Kahurangi National Park / カフランギ国立公園(南島)
総距離78.4km(3泊4日)
『グレート・ウォークス』としてはニュージーランド最長となるヒーフィー・トラック。手付かずの原生林が多く残っているカフランギ国立公園の中に入ると、そこはまるでジュラシックパークやアバターの世界に張り込んだかのような感覚に。全工程を歩く自信がない人には、カラメア側にあるスタート地点「Kohaihai」から「Heaphy Hut」の往復がお勧めだ。
Routeburn Track|ルートバーントラック
Fiordland Natioanl Park / フィヨルドランド国立公園(南島)
総距離32km(2泊3日)
グレート・ウォークスの中では最も距離が短いコースで、グレート・ウォークスデビューには最もおすすめのコース。最初は原生林の中からスタートして、その後景色の変化にも富んでおり、さまざまな表情を楽しめる。最大の見所は「Lake Harris」から「Flats Hut」にかけての峠越え。言葉にするとチープな表現になってしまうが、まるで時空を超えてしまったかのような感覚になるほどの感動を味わえる。山好きはもちろんのこと、すべての人に足を運んでほしい奇跡のトレッキングコース。
Milford Track|ミルフォードトラック
Fiordland Natioanl Park / フィヨルドランド国立公園(南島)
総距離53.5km(3泊4日)
「世界一美しい散歩道」と称賛され、世界中のハイカーを魅了し続けているミルフォード・トラック。3泊4日、計53.5kmの道のりは「奇跡」の連続で、「世界一」の称号の期待を決して裏切ることのないロングトレイルコース。ぼくにとってもこの4日間は生涯決して忘れることのできない奇跡の体験だった。1日わずか40人しか入山を許されていない予約が”超困難”のミルフォード・トラック。もしあなたが山好きなら(もちろん山好きでなくても)、死ぬまでに見るべき絶景がここにある。
※ミルフォードトラックの体験記はこちらにまとめたのでぜひご一読ください。
Kepler Track|ケプラートラック
Fiordland Natioanl Park / フィヨルドランド国立公園(南島)
総距離60km(3泊4日)
基本的にグレート・ウォークスはアクセスが悪く、スタート地点に移動するだけで時間もお金も結構かかるコースが多い中、ケプラー・トラックはスタート地点がテ・アナウという町から徒歩圏内にあり、アクセスがとてもいいコースだ。もちろんグレート・ウォークスの名に恥じることなく、多くの絶景を拝むことができる。特に「Luxmore Hut」から「Iris Burn Hut」にかけては尾根歩きが続くため、「天空の路」を歩いているかのような感覚になれる最高のビューポイントが続く。フィヨルドランド国立公園やテアナウ湖も一望できるなど、歩いていて飽きることがないロングトレイルコースだ。
Great Walksの注意点
『グレート・ウォークス』の多くが3~4日間のコースだが、コースは綺麗に整備されており、標高が高いコースでも1,000~1,300m程度。難易度はそれほど高くなく、縦走や山小屋泊に初めて挑戦したい人にとってもおすすめのコースばかりだ。寝袋や食事・調理器具などは自分で持ち運ぶ必要があるが、山小屋はDOCによって、とても綺麗に整備されており、安心して宿泊することができる(トイレも山小屋としては驚くほど綺麗だった)。
実際にぼく自身も日本にいた頃は、山小屋泊の経験は屋久島でしかなかったものの、グレートウォークスの手続きやスタート地点までのアクセスを押させてしまえば何の問題なく歩けるはずだ。
1つだけ注意点があるとすれば、ハット(日本で言う山小屋)に宿泊する場合は必ず予約が必要で、もし勝手に入山したり、宿泊すると罰金の対象になるため注意が必要だ(Great Walksの予約はこのURLからできます)。
Great Walks まとめ
ざっくりとではあるが、7つの『グレート・ウォークス』を紹介させてもらったが、いかがだっただろうか?それぞれに独自の景観があり、どれも期待を裏切らない素晴らしいコースばかり。まだ足を運べていない Whanganui Journey, Rakiura Track, そして2019年にオープンとなるPaparoa Track and Pike29 Memorial Trackにも、遠くない将来足を運び、すべてのグレート・ウォークスを制覇するつもりだ。
またグレート・ウォークスの魅力はその美しい景色以外も、世界中から訪れているハイカーとの出会いだったり、仲間と山小屋で過ごす時間なども魅力の1つ。ぜひこのグレート・ウォークスで「奇跡」とも呼べるニュージーランドの大自然を思う存分味わって欲しい。その体験は間違いなく、人生のハイライトの1つとなるはずだ。
トミマツ タクヤ
ニュージーランド写真家大学卒業後、大手企業に就職するも会社員生活に馴染めず転職を繰り返す。度重なる体調不良をきっかけに会社員生活に終止符を打ち、2013年 世界一周を夢見てニュージーランドへ初渡航。数ヶ月の滞在予定がニュージーランドのライフスタイルやウェルビーイング(心の豊かさ)に衝撃を受けて、1年4ヶ月もの歳月を過ごす。
帰国後は人生観を大きく変えてくれたニュージーランドの魅力を届けるべく、ニュージーランド写真家として活動を開始。『Small is Beautiful -より小さく より美しく-』をテーマに撮影・表現活動を行う。2015年から過去50回に渡り「写真×音楽×ストーリー」を組み合わせた上映会スタイルの写真展『Small is Beautiful』を日本全国で開催。”写真展示のない写真展” として話題を呼び、延べ5000名以上を動員。自身の人生をも変えたそのメッセージと世界観は多くの人の感動を呼ぶ。
2018年9月にはガイドブック『LOVELY GREEN NEW ZEALAND』を四角大輔氏らと共に出版。2020年1月にはニュージーランドの最長ロングトレイルコース『テ・アラロア』3,000km縦断に挑戦するも、ロックダウンにより1,100km時点で中断(2022年11月より再開予定)。
2020年5月には幸福先進国ニュージーランドに学ぶ「心豊かな生き方=Small is Beautiful」について学び、実践するための オンラインコミュニティ『iti(イティ)』をスタート。日本にいながらもニュージーランドを感じられるような場を作るべく『iti village project』を起ち上げるなど、“Small is Beautiful” の世界観の追求を続けている。
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▶︎ 撮影用HP:TAKUYA LeNZ Photography
▶︎ ロングトレイル専門メディア:Longtrail.com − 挑戦の先に見える景色を求めて −
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